ユーザーは、基本的に多くのページを読んだり、考えたりしたくありません。みんな忙しいし、他にもやることがたくさんあるからです。
ユーザーは、自分の失う時間とページから得られる情報を瞬時に天秤にかけます。価値が無いと感じるとすぐページを閉じてしまいます。
そして、もし何かしらの価値を感じて読み始めたとしても、残念ながら作り手の考えどおりに読み進める人はあまりいません。
編集はこういった“基本的にわがまま”であるユーザーに対し、効果的な工夫を施してページを誘導していく技術です。
一般的には雑誌制作等に従事するためのスキルと思われるかもしれませんが、実は、その力はホームページ制作にも応用できるのです。
ここでは、ホームページ制作の現場において、当社の編集者がどのような仕事を行っているのかを紹介します。
サイトマップとは、ウェブサイト全体のページ構成を一目で分かるように表した図のことをいいます。
ページ間のリンク関係を視覚的に表現するのですが、編集者はここでユーザーが使いやすいよう、以下の点に注意しながら構成を検討していきます。
最適なサイトマップは会社の規模や事業内容ごとに異なるため、都度オーダーメイドで作成します。
※当サイトのサイトマップ
ホームページの構成が決まっても、すぐにデザインに入るわけではありません。
その前にページ単位での構成も設計する必要があります。それを視覚的に表したものがワイヤーフレームです。
当社では、まず編集者が手書きでワイヤーフレームのラフレイアウトを描き、その後デザイナーの手によって清書され、クライアントのもとへ提出されます。
以下では編集者がどのようにレイアウトを決定していくのかを紹介します。
写真やロゴ、イラスト、キャッチコピー、小見出し、本文など、ページで使用する素材を並べ、それぞれの優先順位と関係性を考えます。最もユーザーに見てほしい素材は何か、次に見てほしい素材は何か、素材単体で意味が伝わるのか、補完する素材が離れていないか等を検討します。
ワイヤーフレームを検討するときに重要なのが、ユーザーの目がどう動くかを考えることです。ユーザーの目の動きを操ることができれば、編集者の意図した通りに情報を伝えることができます。それには、人間の目が持つ特性を利用します。
目は「大きい素材」「余白の中にある素材」「明るく鮮やかな素材」「インパクトのある言葉」などを優先してみる特性があります。また、同じ形の連続やグラデーション、矢印など流れを表現したもので誘導されます。
またウェブページは左上から右へ進み、一段下がってまた左から右に読まれるといわれています。
これら視線の特性を掛け合わせながら、伝えたいことが順に伝わるようにページのレイアウトを描いていきます。
素材がきれいに揃っていればいるほど、ユーザーの目線はスムーズに動きます。まず、レイアウトを縦線、横線で分割して複数のブロック(マス)をつくり、そのガイドライン線(グリッド)からはみ出さないように写真やコピーの面を合わせて配置していきます。
一見、ランダムに見えるレイアウトも、基本的にはこのガイドライン線に沿って置かれているからこそ、ユーザーは視線を安定させることができるのです。
※ラフレイアウトはデザイナー側に渡された後、素材同士が1px(ピクセル)のズレも無いようにデザインされ、プログラマー側でも同じようにコーディング・実装されていきます。
通常、ホームページに掲載するテキストはクライアント側が自身で作成して制作会社に提供するか、クライアント側、制作会社側のどちらかがライターに依頼して原稿を作成します。
(当社でも編集者は取材を行わず、プロのライターを派遣しています)
私たちは日々、ライターから送られてくる多くの原稿を確認していますが、残念ながら、編集者の手元に届いた原稿が、そのまま使えるというケースは多くありません。
編集者はライターとは違ったポイントで原稿のチェックを行います。まずはサイト全体のディレクションをしている立場から、制作意図通りの原稿になっているかを確認します。
さらに専門用語の解説ができているか、分かりやすい表現になっているか、物事の理由や背景まで記述されているか、読み進めたくなるような文章になっているかといったことも確認するポイントです。続いて、誤字脱字や表記の統一はもちろん、事実関係や人名、数字関係のチェックなど、いわゆる校正・校閲の作業も行います。
これらをライター一人で行うのは至難の業です。原稿作成に慣れていない企業の担当者であればなおさらです。
また、ライターという職業も名乗ったもの勝ちの世界であるため、依頼する側にその技量を見極める力も必要でしょう。
このように、ホームページ制作の伴走者として編集者が入るメリットは数多くあります。
一般の方にとっては馴染みのない職業かもしれませんが、最もホームページ制作の現場で力を発揮するのが編集者という仕事であると私たちは考えています。
※編集者の仕事は他にも、ヒアリング、ペルソナ/コンセプト決定、企画立案、キャスティング、予算確定、スケジューリングなど多岐にわたりますが、このページでは制作業務に限定してその一部を紹介しました