
先日、仕事の都合で、10年ぶりにこの本を棚から取り出しました。谷山雅計さんという著名なコピーライターが書かれた一冊で、初めて読んだとき「こんなふうに考えるのか」と衝撃を受けたのを今でも覚えています。
業界本はこれまでにもいろいろ読みましたが、この本だけはずっと残してありました。15年ほど前の本ですが、内容は古びるどころか、むしろ今読んでもまったく通用する普遍的な考え方ばかりです。
なかでも、冒頭に出てくる「『なんかいいよね』禁止」という一節は、当時の自分に強く刺さった部分でした。
私は紙でもウェブでも、さまざまなクライアントワークを行っていますが、この“なんかいい”という曖昧な評価をそのままにしない姿勢は、いまでも仕事の真ん中に置いています。
たとえば、猫や花といったかわいいものを見たとき、私たちはつい「かわいい」と言葉にします。
でも、制作に携わる人間が本当にやるべきなのは、「なぜかわいいと感じるのか」を言語化することです。美しいものに心を動かされたときも同じで、その理由を自分の言葉で明らかにすることが仕事の出発点になります。
これは広告寄りのもの──看板、チラシ、YouTubeの動画──を見たときにも同じです。
あの看板がなぜ他より目立つのか。
あるチラシがなぜ頭に入ってこないのか。
動画が伸びるとしたら、何が人の指を止めているのか。
直感で「なんとなく」感じた違和感や魅力を、筋道立てて理解する。言語化する。そうすることで、別の場面でも再現したり、近い形に寄せたりできるようになります。
さらに、制作物が途中で迷子になることはよくありますが、目指すべき“理由”を言語化しておけば、軌道修正も簡単になります。かわいい、美しい、楽しい──その理由を理解していれば、もし迷っても戻れるのです。
文章に落とし込むということは、目の前の事象を要約することでもあります。無数の言葉の中から「これだ」と言える言葉を拾って並べる。
その瞬間、対象がすっと読み手に届く形になります。
私たちは日々、その作業を繰り返しています。
そしてこれは、おそらく制作業界だけの話ではありません。どんな仕事でも、言語化し、要約し、本質を掴むことが中心にあります。
その純度が最も高いのが、コピーライティングという仕事なのだと思います。
久しぶりに読み返したこの本が、やっぱり素晴らしかったので、今回はその余韻をブログにまとめてみました。